カネの水~旅立ち

兄達は集まって相談し、「いつまでもこんな島にいられるもんか。大きなダブルカヌーを作って よその島に行き、そこで酋長になろう」と決心し、さっそく森に入ってカヌーの製作にとりかか りました。

一方アウケレは兄達がそんな計画を持っていることなどつゆ知らず、いつものようにお父さん のそばで遊んでいると、そこにおばあさんがやってきます。 おばあさんから兄さん達の計画を聞かされたアウケレ。彼女はもともと「兄達の仲間に入ると 危険だよ。航海はとても厳しいものになるはずだから」と忠告しにきたのですが、 アウケレは逆に「見知らぬ国への航海」という言葉に目を輝かせ、なんとか兄さん達の仲間に 入りたいと願うようになったのです。

忠告が逆効果になってしまったおばあさんは、それでは、というので、アウケレに旅で役立つ いくつかの品をプレゼントすることにしました。
舐めているだけで飢えと渇きを無くしてくれる魔法の葉、敵を灰にしてしまう力を持った魔法の スカートとカヒリ、それらを魔法のひょうたんに入れてアウケレに授けたのです。

次の日、アウケレが森に遊びに行くと、たまたま、兄さん達がカヌーを作っている現場に 行き当たってしまいました。兄達は、アウケレだけには知られたくないと思っていたので、 アウケレに水を汲んで来いと命令し、森の奥深くに向かわせて洞窟に入らせ、その入り口を 大きな岩でふさいでアウケレを閉じ込めてしまったのです。

当時、若者が何日か行方不明になるのは日常茶飯事だったので、次の日も、そのまた次の日も アウケレが姿を見せなかったにも関わらず、特に誰もあわてていませんでした。

しかし、真相に気づいていた末っ子のイク。彼だけはアウケレを慕っており、ひとりでこっそりと アウケレを探しにいきます。森中探し回ってやっと、アウケレの声がかすかに聞こえてくる 洞窟にたどり着きました。入り口を塞いでいた大きな岩を苦労してどかし、なんとか無事に アウケレを助け出したのです。

アウケレは、腹を立てているのかと思うとそうではなく、むしろ兄さん達にここまで嫌われている ことのほうを気にしています。少なくとも、今のままでは航海になど連れて行ってもらえるわけが ありません。

どうしたらいいだろうかとイクに相談するアウケレ。そこでイクが考えたのは、 「一番上の兄の子供のカウマイ、彼はもうアウケレと同い年で話も合うはず。
また彼は兄嫁の関係で、家族の中で一番高貴な血をひいているので、誰も彼の言葉に逆らえない。 なんとかこのカウマイに頼んでみればいいのでは?」という作戦です。

そして作戦成功。カウマイは、一番上の兄、要するにカウマイのお父さんに、 「アウケレも一緒に航海に出ないのなら僕も行かない」と言い、兄たちはしぶしぶアウケレ も連れて航海に出ることにしたのでした。

末っ子のイクも一緒に航海に出たかったようですが、アウケレは「お前はここに残って 父さんの後を継いでくれ」と説得して、カヌーは出航していきました。

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