ハワイの神話と伝説~英雄マウイ~マウイ、火を発見する

ある日、カウポでの出来事です。
いつものようにマウイが兄さんたちと漁に出ていたときのことです。ちょうど大きな嵐が去った後で、魚たちは水面に群れており、みんな夢中に なって魚を捕っていました。と、マウイがふと、島の方を振り返ってみると、小さな火が燃えているのが見えます。

彼らはみんなびっくりします。というのも、彼らの住処であったハレアカラ火山は既に噴煙を上げなくなって久しく、彼らは火にとても不自由し ており、果物や木の根はもちろんのこと、貝や魚も、なまのまま食べるしかなかったのです。

というわけで彼らは、久しぶりの「料理」が食べられる、と期待して、全速力で岸に向かいました。(当然、料理したい魚もたくさんつかまえな がら、ですが)岸にたどり着き、マウイは火の見えた方向、たなびく煙の根もとに向かってダッシュしました。

ところがそこでマウイが見たものは、数羽の鳥がせっせと火を消しているところで、しかもマウイがそこにたどり着くやいなや、大慌てで飛び去 っていってしまいました。

彼らはそれから何日にもわたって、その鳥、尾の巻いたアラエを探しだし、じっと見張っていましたが、いっこうに火をおこす気配がありません 。やがて彼らもあきらめて再び漁に出ます。ところが、海の上から見ると、しっかり火が燃えていて煙もたっているではありませんか!。そこで 大急ぎで島に戻ると、奴らはさっさと火を消して去っていきます。・・・・ということが何回も何回も繰り返されたのでした。

業を煮やしたマウイは、兄さんたちに「僕は漁に出ずに島に残ってこいつらを見張るよ」」と言い、兄たちだけで漁に出ます。ところが。敵もさ るもの。兄弟たちの人数をしっかり勘定しており、「今日は漁に出ている人数が一人少ないぞ」と言いながら、決して火を起こそうとしません。

作戦失敗。マウイは知恵を巡らし、カパの生地を束ねて、「変わり身の人形」を密かに作り、漁に出る兄たちの一番後ろに引っ張らせてカヌーに 乗せたのです。「今日は全員海に出たようだ」とアラエはとうとうだまされ、おもむろに火を起こしにかかります。待っていたとばかりに登場す るマウイ。頭に血が上っていたマウイは、当初の、「火の起こし方を見つける」という目的をすっかり忘れて、にっくきアラエの首を絞め、殺し てしまおうと力をこめます。

アラエは叫びます。「ここで私が死んだら火の秘密は一生手に入らないわよ!」と。マウイも我に返り、命を助けてやる代わりに火の起こし方を 教えろ、と言います。

アラエはマウイに、水草の茎をこすり合わせて火を起こすのだ、と教えます。マウイは一生懸命水草を集め、茎をこすりますが、当然、火どころ が水がしたたり落ちただけです。アラエは、違う違う、葦の茎も一緒に混ぜてこするんだ、と教えます。マウイがやってみると、茎はポキポキ折 れるばかり。

からかわれていることに気付いたマウイは怒って、半殺しになるまで首を絞めます。アラエは苦しそうに「実は若木の中に火を隠したんだ」と言 います。マウイは一生懸命に探しましたが、そんなところに火があるわけがありません。怒り心頭で再び首を絞めるマウイ。アラエはとうとう、 「乾燥した木を使うんだ」と白状します。

マウイが最初に擦った木では、単に木が暖かくなっただけでした。マウイはめげず、次から次へといろんな木を試していき、そしてとうとう、煙 が出る木を見つけました。「よし。しかしもう1つ、こすっておこないといけないものがある。」そう言ってマウイはアラエの頭に木をこすりつ け、羽が全部抜けて肉が見えるくらいまで痛めつけました。

こうして、ハワイの人たちは火を手に入れることができたわけですが、このとき以来、ハワイのmud henは禿頭になってしまった、ということです。

おわり。

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