ミクロネシアの神話と伝説~島々の創生神話

【パラウ】
その昔、パラウの島々がまだ1つの大きな島であったころ、ウアブという名前の子供が産まれました。この子は小さな頃から異常な大食いで、ばくばく食べてはどんどん大きくなり、子供の頃にはすでに大人の数倍の!大きさにまで育っていました。母親は、自分の家の食料だけではもう養育できなくなり、村長に相談して、村として養ってもらうことにしました。
パラウの巨人ウアブ
しかし、ウアブの食欲はその後もとどまることを知らず、身体はますます大きくなり、やがては村で採れる食料でも足らなくなってきます。もともと豊かな村ではあったものの、このままでは村人全員が飢死してしまう、と危惧した人々は、やむなく、眠っているウアブを縛り上げ、彼を焼き殺そうと火を付けます。

熱さで目を覚ましたウアブは大暴れ。そのときに彼が自分の脚ごと蹴り飛ばしたのが今のペリリュー島。そのおかげでペリリューの人々は今でも走るのが速いそうです。お腹のあたりが一番大きなバベルダオプ島になり、ここの人々は決して飢えることがなく、ちょっと下品なところでは彼のペニスからできたアイメリク島では一番雨が多いそうです。

などなど、ウアブはパラウの島々の起源に深く関わっており、人々は「昔、我々がウアブを養った恩返しで、今ではウアブが我々を養ってくれてるのさ」と語っています。


【ポンペイ】
その昔、サプウキニ、という聡明な男がいました。彼はシャカレンワイオという小さな島に住んでいましたが、島があまりにも手狭になったので、大きなカヌーを作り、16人の人々と共に大洋に漕ぎ出しました。
何日もの航海の後、リダキカというあたりで巨大な鮹に出会い、鮹に「一体どこから来たのか?」と訊くと、「ちょっと南のほうの浅瀬に住んでるんだ」との答。サプウキニ達はその浅瀬を目指すことにしました。浅瀬のあたりは珊瑚があちこちに顔を出していて、気候も良さそうです。

サプウキニはここに人が住める島を作ってしまおう、と決意します。
人々は力を合わせて珊瑚や岩を積み上げますが、大きな波が来るたびに流されてしまいます。そこで、サプウキニは人工島の回りにマングローブを植え、波よけにしてはどうかと考えます。(今でもポンペイの海岸がマングローブで覆われているのはこのためです)

計画はうまくいき、完成した島には大きな祭壇(ペイ)が設けられました。その後、大きくは3つの部族が島に移り住み、今のポンペイの4大部族の祖先となりますが、ポンペイ(石の祭壇の上、という意味)という名前はサプウキニが設けた祭壇が元になっているとのことです。


【ギルバート諸島(キリバス)】
昔、世界に「テ・ボマテマキ」と呼ばれる闇しかなかった頃、創造主であり、蜘蛛の神でもあるナレアウが水と土をこね合わせてナ・アチブという最初の半神と、ネイ・テウケという最初の人間を創り出しました。面白いのは、ネイ・テウケという「人間の祖先」が、鮹の神とか波の神とか海蛇の神などの神を創り出したそうです。

また、創造主ナレアウは、原初の木から花を摘み、その花びらをサモアの北の海に撒いたところ、花びらから、タラワ島、ベル島、タビテウエア島など、ギルバートの島々ができあがった、という伝説もあります。


【グアム】
かつて世界は水しかなく、その中を巨人プンタンと、妹のフウナが歩き回っていました。ある日のこと、プンタンは、自分の死後のことについてフウナに次のような遺言を残しておくことにしました。

自分の2つの目をそれぞれ太陽と月にすること、眉で虹を作ること、背中で空を、からだでグアムの島を作ること、そして砂利から人間を作ること。
フウナは忠実に言いつけを守り、グアムの赤い土を海の水と混ぜて大きな岩も作りました。
その岩を小さな石と砂利に割り、その砂利がグアムの人々になったということです。
(画像はグアム国際空港の壁!)


【マーシャル諸島】
その昔、最初の人間ウエリップは妻と共に「ウプ島」というところに住んでいました。ある日、彼の頭に木が生えてきて、彼の頭に大きな裂け目ができました。その裂け目から生まれてきたのがエタオとジェメリウットの兄弟です。ある日、エタオは父親と喧嘩してしまい、大きな袋に土を詰めて、外界に向けて家出します。ところが、この袋には穴が空いていて、土がいろんなところでこぼれた結果、今のマーシャル諸島の島々ができあがった、ということです。


【クワジェリン環礁(マーシャル諸島)】
現在のクワジェリン環礁は、世界最大の環礁と呼ばれるように、大小97の島々が300kmにも及ぶ巨大な環礁をかたちづくっています。ところが大昔、この環礁はもっと小さく、島々は互いに相手の島が見えるくらい近くにあったそうです。

ある日のこと、クワジェリンに絶世の美女「リエン」がどこからともなく現れました。それぞれの島の領主達は、我こそがリエンの心を射止めようとやっきになりましたが、またある日、彼女は忽然と姿を消してしまいます。

彼女を巡る戦いに疲れ果てていた領主達は話し合い、今度彼女がどこかの島に現れたとしても、互いに見えないくらいに離れた場所にいれば、それに気がつくこともないし、争いが起こることもないだろう、と衆議一決します。その結果、それぞれの島はお互いに思い思いの方向に離れていくことになり、現在の環礁の姿になったのだということです。

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