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ハワイ神話の研究者たち

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FXを楽しむための小ネタ集

ハワイの神話と伝説~神話伝説の探求者~白人たちによる英訳のはじまり(1)

19世紀後半から20世紀前半にかけて、ハオレ(白人)たちによる、ハワイの神話伝説の英語での出版がはじまりますが、彼らの中で、絶対に忘れてはならない存在が Abraham Fornanderであるといっても過言ではありません。

ハワイの神話や伝説については、現在では数え切れないほどの本が出版されていますが、それらの本の大半が必ず参考文献として掲げているのが、一般に「Fornander Collection」と呼ばれている書籍です。
この本は、「Memoirs of Bernice Pauahi Bishop Museum」全12巻のシリーズの一部として収録されているもので、第4巻~第6巻までが「Fornander Collection of HawaiianAntiquities and Folk-Lore」になっています。各巻はそれぞれ3部構成になっており、都合9冊、全部で1500ページ近いハワイの神話伝説のコレク ションなのです。

全部で9冊から成るFornander
Collectionのうち、Volume 5.
No 3。(1919年の初版)
数回にわたって再版も
されています。

ここでは、まず、このコレクションを行った人物、Abraham Fornanderを少し詳しくご紹介し、続いて同時代に活躍した白人たちの業績についても触れてみます。

■Abraham Fornander

Fornanderは1812年、スウェーデンで生まれました。16歳で名門ウプサラ大学に入学、彼の将来は安定が約束されたようなものだったようです。ところが1831年、19才の とき、彼は突然出奔し、なんと捕鯨船の乗組員になってしまったのです。叔母にあたる女性との許されぬ恋が原因だったという話もありますが、正確な理由は定かではありません 。

銛打ち(harpooner)として捕鯨船に乗ったFornanderは、それから10数年もの間、太平洋を駆け回っていました。そんな中、1844年、彼の乗ったAnn Alexander号がホノルルに26日間の寄港をしました。当時、ホノルルには船員向けの礼拝堂があり、そこでSamuel Chenery Damon牧師が公共施設付牧師(chaplain)として熱心に活動していました。牧師は船員達に自分の図書室を公開し、また、郵便物の差出なども引き受けていたようです。本 来はインテリであったFornanderは、牧師に勧められるまま、むさぼるように図書館の本に没頭したようで、やがてAlexander号は出航していきますが、船内にはもうFornanderの 姿はありませんでした。

Damon牧師の紹介で、FornanderはRooke医師のコーヒー農園で働くことになりました。数年後、医師の紹介でモロカイ島の王族の血を引くPinaoと結婚、ハワイに人生の基盤を築い ていきます。ところが結婚の翌年、1848年、アメリカでゴールド・ラッシュが起こります。Fornanderの決断は早く、話を聞くや否や妻と幼子を残してカリフォルニアに飛ん で行ってしまいました。しかし一攫千金の夢は甘くはなかったようで、翌年失意のままハワイに帰国してきました。

この年(1849)はFornanderにとって、また1つの転機だったようです。
「Alpha」というペンネームで当時のHonolulu Timesに初寄稿、ハワイの立憲君主制への痛烈な批判をはじめたのです。その後、活字の世界で生きることになるFornanderの、なん とも面白いデビューでした。
やがて野党新聞「Argus」の編集者から編集長へと転身し、さらには「New Era and Argus」「Sandwich Island Monthly Magazine」など様々な新聞・雑誌を出していきますが、当時の保守系大新聞「Polynesian」を常にライバルあるいは敵として意識してい たようです。

ところが1857年、妻Pinaoが死産、残された娘Katy(当時8才)と2人暮らしを始めたときから彼の生き方は少し変わっていきました。なんとライバル紙Polynesianに転職し 、1860年には彼自身が編集長に着任したのです。そして、1864年にはハワイへの貢献が認められ、カメハメハ5世のもとで政府機関入りを果たし、ついにマウイ州の巡回 判事に任命されるまでに至ります。

翌1865年には教育総監査官(Inspector General of Schools)に任命されました。この仕事は、ハワイ王国中の学校を査察・監督するする仕事です。もともと教育問題にも関 心が高かったFornanderにとっては、実にやりがいのある仕事だったようですが、彼の出世を面白く思わない、保守派の人々との衝突も始まります。1869年には露骨な反 Fornanderキャンペーンもあり、70年に彼は総監査官を解任されてしまいました。しかし、71年には再びマウイの巡回判事として再任命され(このとき彼は59才です)、以 後14年間に渡って奉職することになります。

そして1877年、65才にして、彼の生涯をかけた大作といってよい、「An account of Polynesian race」第一巻を刊行します。79年、85年には引き続いて第2巻、第3巻を刊行。有名なFornanderですが、この三部作がハワイの神話伝説に関する Fornander自身による唯一の著書となります。

Abraham Fornander An account of Polynesian
Race(3巻セット:1969)
Fornanderの伝記

第1巻ではハワイ・ポリネシア人の起源についてかなり過激な考察を展開し、ハワイ人はイスラエル人の末裔であるという結論まで導き出しています。第2巻は神話伝説をそのま ま収録、第3巻は彼の語学力を駆使した比較言語論で、ハワイ・ポリネシア人の起源の根拠にもなっている資料集となっています。発表当時は結構好評で、この著作がもとになっ て叙勲されたりもしていますが、彼のかなり強引な論理展開は学会での評判は今ひとつで、特に後世になるほど、Fornanderのとった手法の古さ、誤謬が指摘され続けました。

特に、まるでアダムとイブ伝説をほうふつさせる「クムホヌア」伝説については、現代の神話伝説に関する書籍でも(Fornanderを出典として)紹介されることがありますが、これ などは明らかにキリスト教文化との混同であることが指摘されています。この原因は、Fornanderの良き協力者であったKamakau、Kepelinoらが敬虔なクリスチャンであったことか ら、彼らの語る古代ハワイと、彼ら自身の思想との混同があったのではないかということです。


しかしながら、Fornanderがこの著作を著すに至った「過程」で収集した膨大な神話伝説資料が、のちに画期的なコレクションと呼ばれることになります。通常、現地での口承収 集にあたって困難になるのが、ハワイの貴族達の間に伝わる口承は「秘伝」として門外不出であることですが、このとき役に立ったのが、モロカイ島の名門出身であった妻Pinao の係累です。また、当時ハワイの名門一族と結婚した白人達からの情報も役に立ったようです。

1887年のFornander没後、Bishop氏によって、彼の草稿が買い取られ、Bishop博物館の力でそれらの英訳作業が行われました。この作業は必ずしも順調ではありませんでした が、1916年~1920年にかけて、Thomas.G.Thrumの監修及び注釈で、本章冒頭でご紹介した「Fornander Collection」全9巻が刊行されたのです。

波乱に富んだ生涯を送ったFornander、晩年には名声を得ることもできたようですが、彼の評価が本当に高まったのは、死後30年もたってから刊行されたこの本によるところが 大きいようです。
Fornanderの墓所はパンチボウルの近く、マキキ墓地の中で妻Pinaoと子供達の墓とならんでおり、今でも訪れる人が絶えません。


■ Thomas G.Thrum
Fornander Collectionの最終編者として知られるThrumですが、彼自身の経歴もちょっと面白いものがあります。
1842年オーストラリア生まれのThrumは、1853年にハワイに移住、特に学校には行っていなかったようで、13才のときから店員として働きはじめました。どうもこの頃 、Fornanderの経営するArgus紙の編集部にちょくちょく遊びに行っていたようです。

1856年から3年間は捕鯨船の乗組員として働き、紆余曲折ののちに1875年、「Hawaiian Almanac and Annual」を刊行することになります。Thrum's Annualとして知られるこの年鑑は学術的にも価値あるものとして評価が高く、1932年のThrumの死後も刊行を続け てなんと現在に至っているのです。

Thrumはハワイの伝説や、ヘイアウなどの史跡にも非常に興味を持っていましたが、彼自身はあくまでも編集者に徹したようで、さまざまな研究者に呼びかけては彼 の年鑑に記事を寄稿してもらうのが常でした。Thrum自身の著作として「Hawaiian Folktales」「More Hawaiian Folktales」の2冊がありますが、彼がその序文で明記しているように、この2冊はほとんどこの年鑑に寄せられた記事の集成版です。

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