(2000.9.10)
ハワイ語辞典でHILOをひくと、to twist(撚りあわせる),
braid(編む)というような意味が出てきます。でも、なぜHILOの町が「よりあわせる」なんでしょうか?
ここで簡単にその由来をご紹介しましょう。
昔、カメハメハ大王がハワイ全土統一の野望を抱いて日々戦いに明け暮れていたころのお話です。あるとき、
カメハメハ大王は、ハワイ島ワイルク川の河口のほとりに宿営を張りました。当時のカメハメハは、そこらじゅう
敵だらけ、という状況で、刺客から逃れるためにも、1カ所に定住する、ということが無かったようです。
そして、川の下流中州、現在ではReeds Islandと呼ばれているところに住んでいる友人を訪問しに行きます。
その友人は気心も知れており、なおかつ、結構な地元の実力者でもあったので、カメハメハは特に用心せず、
いつものような護衛を引き連れての訪問ではなく、気楽に1人で出かけて行きました。
出かける前に彼は家来達を呼び、「これから出かけてくるが、カヌーをしっかり見張っておくように。盗まれたり、
潮に流されたりしたら困るからな」と言い残します。
家来達は、まじめにずっとカヌーを見張っていました。しかし、待てども待てども大王は戻ってきません。
メッセンジャーがやってくる様子もありません。彼らはだんだん心配になってきました。何しろこのあたりの
川の流れは大変に急で、そのために「ワイルク:Wai-luku:荒れ狂う水」と呼ばれているくらいです。
また、川の周辺には、昔の溶岩流によってあけられた洞穴がたくさんあり、しかも木や草で巧みに隠されています。
いったんそこに落ちてしまおうものなら、這い上がってくるのは容易なことではありません。
心配が頂点に達し、ついに家来の1人が口を開きます。「ここは、カヌーを置きっぱなしにしても、大王を探しに
いくべきではないか」と。しかし、言いつけを守らなかったときの大王の怒りを考えるとそれはそれでなかなか
すぐに実行できるものではありません。
「俺に考えがあるんだ」さっきの家来が言います。「ロープを作って、それでカヌーを係留しておけばいいんだ」
「ロープを作るって?一体どうやったらそんなことができるんだ?」別の家来が言います。
「簡単さ。見ててご覧。まずはティの葉を集めて、しっかりなめす。そして、こうやって2つの葉を撚り合わせて
置いておくと、ほら、あとは勝手に撚りあわさっていって、どんどん丈夫になる。これをどんどんつなげて
いけばいい、という寸法さ。こういう撚り合わせかたをHILOというんだ。」
間もなく彼らはとても丈夫なロープを作り上げ、ワイルク川の河口に近いKaipa'aloaという地点(現在、灯台が建って
いる場所です)に係留すると、大急ぎで大王をさがしに行きます。
ところが川をさかのぼってほどなくのところで、なんと大王は何事も無かったような顔でこちらに戻って来るでは
ありませんか。「おまえ達、カヌーはどうした!今のこの瞬間にも流されてしまったらどうするつもりだ!」
当然大王は問いただします。「ティのロープでつないでおります、陛下」と、くだんの家来が答えます。
「ティのロープだと?そんなことができるのはワイピオの住人だけだ、と聞いている。お前はどうやったのだ?」
「実は私はワイピオの出身なのでございます、陛下」
「そうか、そういうわけか。それはいい。よくやった、お前達。これからはこの地をHILOと呼ぶことにしよう」・・・
というわけで、ワイルク川河口の地は、それ以来、「撚り合わせ」がおこなわれた場所、すなわちHILO、
と呼ばれることになったそうです。