ピリ王朝12代目のリロア王は善政で有名でした。しかし、その息子ハカウは愚昧で、リ
ロア王の隠し子ウミによって倒されてしまいます。ウミ王の時代、ハワイ島はある意味で
全盛期を迎え、ウミは隣のマウイ島をも従える大王となるのです。この、前王の実子を殺
して王位につき、かつ、戦略も内政も優れていたというウミ王を、のちのカメハメハ大王
は自分自身の鏡のように考えていたともいわれます。
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15世紀頃、ハワイ島でのお話です。
当時のハワイ島はピリ王朝の直系、リロア王の時代でした。王室は歴史ある場所、 ワイピオ渓谷におかれており、ここからハワイ島全土を治めていたのです。 リロア王には、正
妻のピエナの間にハカウという長男が生まれていました。
ハカウが生まれたしばらく後、リロア王がヒロに長旅していたときのできごとです。
偶然、水浴中のアカヒクレアナという女性を見かけて、王は一目惚れしてしまいました。
その日のうちに2人は結ばれ、彼女は妊娠してしまいます。
しかしリロア王はもうすぐワイピオに戻らねばなりません。
生まれてくる子供に、自分が親である証として、彼女に自分のマロ(ふんどし)と鯨の歯の
ネックレスを託します。そして、男の子ならウミという名をつけるように。女の子だったら
任せると言い残してワイピオに戻ります。アカヒクレアナのほうももその後別の男と
結婚しました。
アカヒクレアナの元でウミはすくすくと育ちました。そして彼が自我を持つ少年に育った
頃、アカヒクレアナは、息子に、本当の父親のことを正直に打ち明けたのです。
ウミは、しばらく考えた後、やはり実の父親のもとを訪ねていこうと決意します。
ワイピオへのお供は、遊び仲間だったオマオカマウとピイマイワア。
さらに途中でコイという名前の少年も仲間に加わります。
3人はまだ遊び盛り。旅の途中でサーフィン大会をやっているのに出くわし、飛び入りで
参加します。ウミのサーフィンの技術はなかなかなもので、あわや優勝しかけますが、
競っていたパイエアという男がウミを妨害し、優勝をさらっていった上に、ウミに怪我を
負わせてしまうのです。パイエアに復讐をしたいものの、今はまだ力が足りないと
判断したウミたちは、悔しさを押し殺してワイピオに向かいました。
ワイピオの王室では、ウミが携えてきた証拠のマロとネックレスの効果もあって
すぐに認知してもらい、リロア王から大歓迎されて、そのまま仲間と共に王室で
暮らし始めることになります。
長男のハカウは、突然現れてきた弟、しかも、血筋が定かでないような弟をリロア王が
可愛がるため、内心穏やかではありませんでしたが、リロア王から、「ハカウは王に」
「ウミは家臣に」という宣言があり、いったんは丸く収まりました。
しかしほどなくリロア王は亡くなってしまい、生前の約束どおり、ハカウが後を継いで
即位しました。王になったハカウはウミへのいじめを続け、いろいろと難癖をつけては、
とうとうウミを王室から追放してしまったのです。
ウミは仲間3人と王室を出、ハマクアとヒロの境界、ワイプナレイという静かな村に
やってきました。ここで4人はそれぞれ身分を隠して暮らすことにし、村の娘たちと
結婚もします。ところが、仲間たちはそれぞれに嫁の親の畑仕事を手伝っているにも
かかわらず、ウミだけは決して働こうとしません。
そんなウミにたまりかねた嫁の親は、ウミをさかして漁に出させます。
もともと、漁の腕前も一流であったウミはいつも大量のマグロをしとめますが、それらを
家に持って帰ろうとせず、すべて祭壇に捧げてしまうのです。
この頃、ウミの祀る祭壇からいつも虹がかかるという噂が流れます。虹というのは、
身分の高い、神や王のしるしとされています。そしてついに、カオレイオクというカフナが
虹のしるしをもとにウミの正体を知ることに
なります。カオレイオクは、ウミを主人として自宅へ招き、共に暮らしはじめました。
やがてウミのさまざまな優れた能力や人望が評判を呼び、ついには160人もの人々が
ウミとカオレイオクのもとに集結したのです。