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ポリネシアの神話・伝説

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FXを楽しむための小ネタ集

ポリネシアの神話と伝説~コウモリの恩返し

昔、トンガのツイトガ王のところに、サモアからレウトギという美しい姫が嫁ぎました。当時トンガとサモアは交戦状態で、そんな中、政略結婚の1つとして、既に何人もの妻を持っているツイトガ王に、なかば犠牲のようなかたちで嫁がされたのです。

レウトギは、トンガの王宮の女達のような奥ゆかしさが無く、マットを編んだり髪をといたりするかわりに、ジャングルで遊びたがるようなところがあって、ツイトガ王からは疎まれていました。

そんなある日の出来事です。
レウトギが従者を連れて森を歩いているとき、小さなこうもりが岩陰でふるえているのを見つけました。
「触ってはダメです!」と従者。
「何言ってるの。もう死にそうじゃない。ほら、こんなに小さいのに、 息も絶え絶えになっている。かわいそうに。」とレウトギ。
「放っておけばいいのです」と従者。そして彼は小さな声でつぶやきました。「サモアの女はなんて不作法なんだろう。トンガの女性はコウモリ、特にこんな病気のコウモリなんか絶対触らないのに」

レウトギは従者の方を振り返りました。彼女にも、このままコウモリを連れ帰ったりすればみんなの笑いものになることはよくわかっていました。

コウモリのほうは、怯えてさらに岩陰の奥へ逃げ込もうともがいています。レウトギもさらに奥へ進み、
「かわいそうに。助けてあげるからね。怖がらなくても大丈夫よ」
「触ってはダメだと言ってるでしょう!噛まれたら病気になります!」
従者の叱り声はコウモリとレウトギの両方を怯えさせました。
コウモリは最後の力を振り絞って飛ぼうとします。
「まあ、なんてこと。羽が片方破れてる。こんな状態で飛んだりしたらもっとひどいことになるわ。かわいそうに。ほらじっとして、大丈夫だから。」

そう言うと、レウトギは静かにコウモリにちかづき、羽に注意しながら、そっと優しくすくい上げました。
「なんてことを!こういう邪悪な動物は用途は1つしか無いのです。そう、食用です。ココナツクリームで煮ると、たしかにおいしい。しかしこういう病気のコウモリはどうしようもない。ネズミの餌にでもして、ネズミが病気になるところをとくとご覧下さい!」
従者はかんかんに怒っています。

レウトギは、しかし忠告は無視して、バナナの葉を1枚もぎ取るとそれでコウモリを優しく包み、「彼らには言いたいだけ言わせておけばいいのです」と、コウモリを連れ帰りました。彼女はコウモリを自分の小屋に隠しました。が、毎朝、王宮に出かけるたび、従者や女官達が自分を指して嘲笑しているのがわかりました。

食事は、彼女はいつも1人きりでとっていましたが、パパイアやマンゴー、グアバなど、常に少しだけ残してコウモリのために持って帰ってやるのでした。夜になると彼女は小屋の外で1人、故郷のサモアの方向に向いて座り、コウモリを膝に乗せて、この小さな友達のために故郷のチャントを詠じてやったのでした。

コウモリはよく食べ、みるみる元気になっていきました。羽も回復し、彼女は、そろそろ森に帰してやるときだ、と感じました。彼女はコウモリのとがった鼻をちょっとつついてやりました。けれどもコウモリは大きな丸い目でじっと彼女を見つめ、耳は彼女の顔を向いて、いつものチャントを待っています。

「今夜はもうお話は無いのよ。あなたはもう森に帰って、自分で食べ物を見つけるようにならなくちゃだめなの。」と、言うと、彼女は人々が寝静まるのを待って暗闇の中、断崖の方へとコウモリを連れていきました。そして海に向かって立つと、コウモリを高々と差し上げ、「さあ、自由に向かって飛び立つのよ」と促し、コウモリはちょっと寂しげに飛んでいきました。

次の日、彼女は新しい仕事を命じられました。第一王妃の息子の養育係です。王子は大変なわがままで、彼女は1日中、「あれをもってこい、これを運べ」とこき使われる毎日でした。夜だけが彼女の自由になる時間でした。王子が眠りにつくと、彼女は断崖に出かけていき、故郷サモアの歌を口ずさんで慰めにしていました。

ある夜、彼女がまた静かに断崖に座っていると、誰かいるようなフルーツバットの群気配がします。
「誰?何なの?」・・すると、風が優しくなり、その姿が見えました。
「まあ、コウモリ!あなたなの!毎日とても悲しかったのよ。もっと近くに来てちょうだい。またお話を聞かせてあげるわ。」
その夜から毎夜、レウトギは果物をおみやげに、この小さな友達と楽しいひとときを過ごしました。コウモリの数もだんだん増えていき、パンの木にびっしりと止まったコウモリたちは、みな楽しそうにレウトギの話を聞くのでした。

そんなある夜、彼女が村に帰ってみると、大声や叫び声が聞こえてきました。たいまつも灯され、人々が走り回っています。そして、第一王妃の悲鳴も聞こえました。なんと、王子が死んでしまったのです。

レウトギは、本来、かたときも王子の側を離れてはいけない役目でした。彼女は死刑を宣告されました。そして村はずれの大木にくくりつけられました。あたりでは薪が燃やされ、村人達も見物に集まってきました。

静まり返った雰囲気の中、レウトギの詠じるチャントだけが朗々と響いています。そして、ついに王が命令し、たいまつをもった兵士たちがレウトギのほうに近づき、人々がレウトギの悲鳴を期待したその瞬間、なんと空が真っ黒に覆われ、すべての火が消えてしまったのです。

それは、レウトギを助けるためにやってきたコウモリの大群でした。後から後からコウモリがやってきては、たいまつと、兵士の顔に「おしっこ」をかけて去っていきます。村人達は笑い出しました。

王は怒りを爆発させました。焼き殺せないのなら、飢え死にさせてしまえ!と命令し、今度は彼女はカヌーにくくりつけられて岩だらけの無人島へと流されたのです。

王の使者が毎日、もう死んだか?と彼女の様子を探りに来ました。しかし彼女はいたって元気、幸せそうで、お腹を減らした様子ものどが渇いた様子もありません。「お前は魔女か!?」と使者が悪態をついても、彼女は穏やかにパパイヤを差し出したりしてこたえます。
「いったいどこからこんなものを!?」
彼女は空のかなたを指さします。使者は恐ろしくなって逃げ帰ってしまいましたが、使者の姿が見えなくなるやいなや、空は黒く曇ってきました。

そう、彼女の友人達、コウモリの大群が毎日食べ物と飲み物を運んで来ていたのです。そして彼女は毎日サモアの歌を歌っていましたが、新しい歌も考えました。傷ついたコウモリを助け、コウモリと友情を結んだ少女がこんどはコウモリに何千回も助けられる、という物語です。

画像出典:http://www.southpacific.orgより flying foxes