ハワイの神話~創世神話クムリポ

クムリポの直接の意味は「起源」、ハワイの王家に代々口承で秘密裡に伝わってきた創世神話、叙事詩で、 ハワイ王国第7代、メリーモナークとして有名なカラカウア王が1889年に公表、彼の後、王位を継いだ妹、ハワイ最後の女王 リリウオカラニ女王が退位後、1897年に英訳して、世界的に有名になったものです。

作成されたのは1700年頃、ロノイカマカヒキという王子の誕生を祝って、ということです。日本で奈良時代に元明天皇が太安万侶に命じて、稗田阿礼が口承していた 帝紀・旧辞を古事記にまとめあげたのと似たようなものかもしれません。

内容は、16のパートに分かれています。前半の8部が、「闇の世界」。宇宙のはじまりから説きおこし、 原初の生物として珊瑚とポリプが出現するのはいかにも南の国ですが、やがてヒトデやウニ、次に貝、 そして植物、というように、まるで進化論のように次々と高等生物が出現していきます。第8歌の 終わりで闇は終わりを告げ、神が登場します。カナロア、カネなど今でも深く信仰されている神々から ハワイ王族の系譜へと延々と続きます。

2102行から成る全文は、内容の豊かさもさることながら、音韻構成、男女の対比、色彩の対比など、 その緻密な構成は驚異的なものです。

以下にそのごく一部を示します。
(日本語はKamuela Kuali'i Lindseyによる英訳経由の私訳なのでおかしなところはご勘弁ください)

Ka Wa Akahi(Chant I)/第1歌
1. O ke au i kahuli wela ka honua/宇宙が回っていたとき、大地は熱く
2. O ke au i kahuli lole ka lani/宇宙が回り終えたとき、天空はくつがえり
3. O ke au i kuka'iaka ka la/太陽が影の中に現れたとき
4. E ho'omalamalama i ka malama/それは月を明るくする光を起こすためにすぎず
5. O ke au o Makali'i ka po/プレアデスが夜の小さな目であったとき
6. O ka walewale ho'okumu honua ia/どろどろしたものの中に大地が形成され
7. O ke kumu o ka lipo, i lipo ai/暗がりの中に暗黒がつくられた
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Chant VIII/第8歌
595. O kama auli['i], auli['i] anei/子供ができた。とてもよくできた
596. O kama i ke au o ka po kinikini/人の数が増えたときに子供
597. O kama i ke au o ka po he'enalu mamao/遠くから人がやってきたときに子供
598. Hanau kanaka o mehelau/何百という人が生まれた
599. Hanau kanaka ia Wai'ololi/狭い流れの男が生まれた
600. Hanau ka wahine ia Wai'olola/広い流れの女が生まれた
601. Hanau ka po Akua/神々の夜が生まれた
602. O kanaka i kukuku/人々は共に立ち
603. O kanaka i momoe/人々は共に眠った
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クムリポの全文は、Beckwithの著書「Kumulipo」でハワイ語の原文と英語の解説を読むことができます。また、後藤明先生の著書「南島の神話」で、系図の部分を除く全文の日本語訳も読むことができます。

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